自分に合った事業形態を選択するために、個人事業主と法人の違いを知ろう
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司法書士は円滑な事業経営を進める上で、経営者にとって欠かせないパートナーです。
事業を始めようと考えた際に、「個人事業主」か「法人」のどちらを選択すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では個人事業主と法人の違いや特徴について解説していきます。
個人事業主と法人の違いを比較
ここでは個人事業主と法人との違いを、手続きや税金、その他費用など、事業を営む上で生じる差について、9つの項目に分けて解説してまいります。
事業開始に必要な手続き
個人事業主が事業を開始する場合には、以下の2ステップですぐに事業を開始できます。
- 開業届を税務署に提出
- 青色申告を希望の場合は「青色申告承認申請書」の提出
法人の場合では、以下の手続きが必要となります。
- 法務局での法人登記
- 会社設立に必要な書類や法人印などの準備
法人登記は専門家に依頼せず自分でも可能ですが、必要となる書類も多く不備がある場合には、申請が却下される恐れもあるため、専門家である司法書士に依頼することが一般的です。
事業開始するためにかかる費用
個人事業主は0円から事業を開始できる一方、法人では少なくとも以下の費用がかかる恐れがあります。
- 法人登記関連手続き費用11万円~24万円
- 司法書士代行依頼費用5万円~20万円
手続き費用に開きがあるのは、株式会社か合同会社を選択するかで、必要な費用に差があるためです。
また、確実に手続きを進めるために司法書士を利用する場合、代行費用が追加されます。
資金調達の方法
資金調達の方法として主に以下の方法があり、個人事業主と法人とで利用できる方法について表にまとめました。
調達方法 | 個人事業主 | 法人 |
クラウドファンディング | 種類による | 利用可能 |
補助金・助成金 | 種類による | 利用可能 |
金融機関からの融資 | 利用できるが難易度が高い | 利用可能 |
株式発行 | 利用不可 | 株式会社は可能 |
社債発行 | 利用不可 | 利用可能 |
資金調達の柔軟性は法人の方が高いと言えます。
事業維持にかかる税金及び費用
個人事業、法人問わず事業を継続していくためには様々な費用が掛かります。
個人事業主と法人でそれぞれ以下の費用がかかります。
個人事業主の場合
- 所得税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 消費税
- 社会保険料(従業員が5人を超える場合)
- 労災保険
- 雇用保険
法人の場合
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税
- 社会保険料
- 労災保険
- 雇用保険
支払うべき税金や費用は個人と法人とで名目が違うものの、種類としては概ね同じです。
しかし、事業所得が増えた際に個人と比較して法人の方が所得税の税率推移が穏やかという特徴があります。
社会的信用
個人事業主であっても事業を行う上で大きな問題はないものの、法人によっては個人事業主との取引を避けたり、金融機関からの融資の際に審査基準が厳しい場合があったりします。
やはり社会的信用は法人の方が高いと言えるでしょう。
経費の該当範囲
経費の該当範囲は個人事業主と法人で大きな差があります。
個人事業主に多いパターンである、自宅を事務所として利用している場合、家賃や水道光熱費を、私生活と事業にかかった費用との比率で「家事按分」して計算しなければなりません。
また個人事業主の所得は事業所得しかない一方、法人の場合は給与所得として処理し、経費計上も可能となるため、節税においても法人に大きなメリットがあります。
赤字の繰り越し
赤字の繰り越しにも個人と法人で大きな違いがあります。
- 個人事業主の場合:3年
- 法人の場合:10年
事業の黒字化に時間がかかりそうな事業の場合、法人の方が長期に赤字を繰り越し、事業所得と相殺させ課税対象額を長期間、減額できます。
事業承継
事業承継において有利となるのは法人です。
法人の場合、経営者が亡くなったとしても、法人はそのまま存続するため、事業承継において特別な手続きは必要ありません。
一方、個人事業主の場合は個人の事業であるため、事業を担う個人が交代する場合、それを証明する手続きとして、以下の手続きが必要となります。
- 廃業届の提出(事業を承継される人)
- 開業届の提出と屋号の引継ぎ(事業を承継する人)
実際に引継ぎ手続きを進める際には多くの書類が必要となり、手続きが煩雑となるため司法書士の利用がおすすめです。
個人事業主と法人がそれぞれ向いているケース
ここまで解説してきました違いや特徴を基に、個人事業主と法人が向いている方の特徴をそれぞれご紹介します。
法人設立が向いている場合
法人設立は、以下のような場合が節税メリットなどの法人の特徴を利用しながら事業が可能です。
- 企業間取引が多い事業を行う
- 事業を拡大したい
- 年間課税売上が1,000万円を超えている
- 年間総利益が800万円を超える可能性が高い
個人事業主が向いている場合
個人事業主の場合は、とにかく小さく、すぐに始めたい方に向いているでしょう。
- 資金をなるべくかけずに始めたい
- 事業拡大の予定がない
- 所得の大きな伸びがまだ見られない
まとめ
個人事業主か法人かそれぞれの特徴をよく知れば、余計な費用を抑えながら適切な事業経営が可能です。
しかし、最適な事業経営の形態の選択や、法人化の手続きには専門知識が必要なため、経営サポートが得意な司法書士への相談をおすすめしています。